会社が用意する従業員の社宅家賃算定に関しては「国税庁」が一定額以上の家賃を納めていれば、その家賃費用は非課税にする事を認めておる。
これは逆に言えば、あまりにも地域の家賃相場からかけ離れた非現実的な家賃設定を行った場合には給与収入として課税しますよ。というボーダーラインを設定していると考えることもできるのぉ。
しかし、実際にこの計算式を用いて従業員の社宅家賃算定を行った場合、やはり相場よりもかなり安価な賃料設定が可能となっておる。
税金の徴収が厳しい感のある国税庁ではあるのじゃが、社宅家賃設定に用いている非課税ラインは易しい設定となっておるのじゃよ。
では、ここで従業員の社宅家賃を算出する計算式をまず確認しておくとしよう。
従業員の社宅家賃算定を行う場合は以下の3つの項目をそれぞれ計算し、最後に合算した金額が社宅家賃の「賃料相当額」として用いられる事になる。
尚、この賃料相当額は最終的な社宅賃料という事ではなく、非課税計算の基準となる賃料と捉えておくことがポイントじゃ。
@Bの固定資産標準額は、自社所有物件の場合は固定資産税納付書に記載されておる課税標準額の欄を確認。
借り上げ社宅の場合は対象物件の管轄エリアに該当する市役所・区役所で固定資産台帳を閲覧し確認しておく必要があるのぉ。
尚、固定資産標準額の計算は「その年度」の課税標準額を用いて計算するのじゃよ。
従業員の為に用意する社宅家賃の計算式は前項の従業員社宅家賃計算式に記した通りじゃ。
ではここでは更に一歩踏み込んで、具体的にひとつの物件を事例に固定資産税標準額、延べ床面積を計算しながら家賃相当額を計算してみるとしよう。
では順を追ってひとつずつ計算を行なっていくとしよう。
まず@の建物の固定資産税課税標準額の算出を行う。
建物の課税標準額は400万となっておる為、
@400万X0.2%=8000円
となる。
続いて床面積は64平米となっておる為、先に分子÷分母を計算し
A64÷3.3X12=232円
最後に12円をかけると232円となる。(小数点以下は切り捨てで計算)
続いて土地の課税標準額は120万円となっておる為、
B120万X0.22%=2640円
となり、@ABを合算すると
@8000円+A232円+B2640円=10872円
となり、この「10872円」が家賃相当額として算出されたこととなるのぉ。
では最後に従業員社宅家賃が給与とみなされない非課税ラインの確認じゃ。
前項の東京都杉並区の賃料16万円、総床面積64平米の3LDKの従業員社宅の事例では、家賃相当額の計算結果が16632円となったのぉ。
国税庁の社宅非課税の基準では、この10872円の50%以上の家賃を負担している場合は賃貸料が非課税となることから
10872÷2=5436円
となり、従業員が5436円以上の自己負担を行えば給与とみなされずに非課税扱いとなる。
この社宅家賃が非課税となる計算式を踏まえると、前述した杉並区の事例の物件の場合、6000円程度の自己負担で家賃16万円相当の物件に居住する事が可能(しかも非課税)であることが解るのぉ。
尚、仮に相場からかけ離れた1000円で従業員に社宅提供を行った場合は
10872円−1000円=9872円
となり、9872円が給与として支給された扱いとなり課税所得となるという点はしっかり把握しておきたいものじゃ。
社宅制度は十分と言えるほどの多くの控除が設定されておる為、1000円などといった不自然過ぎるほどの安すぎる家賃設定をしてしまっては、逆に社宅制度の利点を活かしきれていないという事になってしまうのじゃな。
尚、現実的には今回の事例で用いたような家賃16万円クラスの物件を社宅として用意した場合、やはり最低ラインでも4万円以上の負担金で家賃を設定するのが一般的じゃろう。
仮に最低ラインの4万円でも相場家賃16万円の4分の1。(割合で言えば25%)
もちろん5436円以上であることから非課税であり、かつ相場家賃よりもかなり低い家賃設定が大半を占める社宅はやはり従業員にとっては大変ありがたい制度と言えるじゃろう。